2016年のマイナス金利導入以降、金融機関を取り巻く環境が急激に悪化、中でも地域の各金融機関がどうやって生き残っていくかが問われることが多くなっています。

 そのような状況の中で、今年の411日に金融機関の監督官庁である金融庁から出された報告書が関係者に大きな衝撃を与えており、本日の日経新聞でもその報告書に対する関係者の反応が取り上げられています。 

【金融庁報告書について】

報告書は、金融庁の審議会である「金融仲介の改善に向けた検討会議」がまとめた「地域金融の課題と競争のあり方」です。

〔金融庁ホームページ〕

https://www.fsa.go.jp/singi/kinyuchukai/kyousou/index.html

 将来の金融機関貸出残高は地域の人口減少により、大きく減少することが見込まれています。地域の生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)と貸出残高は、強い相関関係があることがわかっており、将来の生産年齢人口推計により、将来の貸出残高を推計し、金融機関の損益状況を検討しています。

その結果として、示されたのが下記の地図です。  

図「地域金融の課題と競争のあり方」 各都道府県における地域銀行の本業での競争可能性

・「青」:2行での競争が可能な地域(11都府県)

・「白」:2行での競争は不可能だが、1行単独(一番行のシェアが100%)ならば存続可能な地域 (13道府県)

・「赤」:1行単独(一番行のシェアが100%)になっても不採算の地域(23県)

 

 なんと、47都道府県の半数近い23県においては、県に1行しかなくても生き残りが難しいという極めて厳しい結果となっています。

 報告書では、競争が激化していることから、地域での貸出のシェアをいくら伸ばしても収益の改善が難しいことも取り上げられており、現状のままで生き残りの難しい地域については「経営統合は一つの選択肢」としています。

 

【北海道の将来生産年齢人口の推計】

 報告書によると北海道は「白」であり、2行での競争は不可能ですが、1行単独(一番行のシェアが100%)ならば存続可能な地域とされています。

 ただ、広い北海道では地域によって、人口動態が大きく違っています。生産年齢人口が大きく減少する地域では、金融機関が店舗を維持することが難しくなるでしょう。各地域の状況を十分理解し、地域の活性化を図り、衰退を防ぎ止めることも地域の金融機関の大きな使命であると思います。

表「北海道の各地域振興局の将来生産年齢人口」

 全体の人口減少よりも生産年齢人口の減少率は高くなります。全道では2015-25年で全人口は6.8%減少するのに対して、生産年齢人口は13.3%減少、2015-2035年では全人口は15.5%減少するのに対して、生産年齢人口は25.3%減少となっています。

 札幌市を含む石狩振興局では減少率が小さくなっていますが、その他の地域ではいずれも厳しい状況となっています。道内20信金のうち、14信金が札幌市に出店していることも将来を見越してのことでしょう。

 金融機関店舗の存廃は地域にとっては大きな問題となります。今後、各銀行の経営統合に向けた動きとともに、店舗政策の動向が注目されます。