3月25日、金融庁より「主要行等及び地域銀行の「金融仲介の取組状況を客観的に評価できる指標群(KPI)」一覧及び公表状況」が公表されました。
こちらは、金融庁が各金融機関に対して、担保・保証に過度に依存しない融資を促すため、借入時の経営者保証をどの程度徴求しているかを半年ごとに公表しているものです。
今回公表分は、「令和3年度上期(4月~9月)」の数字を取りまとめたものです。なお、各銀行においても自行の状況についてそれぞれホームページで公表しています。
公表項目は、①新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合、②事業承継時における保証徴求割合(新旧経営者からそれぞれ保証を徴求しているかどうか)の2点です。
【新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合】
2013年に「経営者保証ガイドライン」が制定され、各銀行においても徐々に融資に際して経営者保証を徴求しない傾向が高まってきました。「令和3年度上期(4月~9月)」では、約3割が経営者保証なしで新規融資を行っています。
金融庁「経営者保証に関するガイドラインの活用実績」(2021年12月24日)
個別の銀行ごとに見ていくと、銀行ごとに大きなバラつきがあります。最も高い割合の銀行で89.5%、最も低い銀行で14.6%となっており、30%台の銀行が約半数を占めています。
〔地域銀行100行の新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合(令和3年度上期(4月~9月)、当事務所集計)〕
道内2行についてみると、どちらも全国の平均を上回っており、保証に依存しない融資が進んでいます。
北海道銀行 | 55.2% |
北洋銀行 | 41.9% |
「金融仲介の取組状況を客観的に評価できる指標群(KPI)」「令和3年度上期(4月~9月)」より
【事業承継時における保証徴求割合】
事業承継時においては、従来は前経営者と後継者の双方から借入の保証を徴求する傾向が強く、事業承継が進まない大きな要因の一つとなっていました。
その問題を解決するため、令和元年には、前経営者と後継者の双方から保証を二重で徴求することを原則禁止とする「経営者保証ガイドライン」特則が制定され、銀行の姿勢も大きく変わってきています。
「令和3年度上期(4月~9月)」では「二重徴求」は4.4%まで減少しています。
金融庁「経営者保証に関するガイドラインの活用実績」(2021年12月24日)
道内2行についてみると、どちらも「二重徴求」は0です。北海道銀行では「旧経営者のみから保証徴求」の割合が高いのに比べ、北洋銀行では「新経営者のみから保証徴求」の割合が高いといった特徴がみられます。
〔事業承継時における保証徴求割合〕
「金融仲介の取組状況を客観的に評価できる指標群(KPI)」「令和3年度上期(4月~9月)」より
各金融機関では担保・保証に依存しない融資を実行するように、意識が大きく変わってきています。融資取引条件の改善については、日常から金融機関とのコミュニケーションを図り、自社の経営方針、財務の状況について十分理解してもらうことが必要です。
(2022.3.30)