3月30日に「令和3年中小企業実態基本調査(令和2年度決算実績)速報」が公表されました。本調査は中小企業及び個人事業者を対象に毎年実施されているもので、決算状況の調査に加え、追加の設問により関心の高い項目についての調査が行われます。今回の調査では「事業承継」についての調査が行われており、こちらの調査結果についてみてみます。

【社長(個人事業主)の年齢別構成比】

個人事業者では約半数が70代以上と年代が高くなっており、50代以下は3割に満たない割合です。

法人については、50代と60代が最も多い割合を占めています。規模が小さいほど70代以上の社長が多い傾向です。多くの調査でも経営者の高齢化が話題となっていますが、本調査でも「法人計」では約25%が70代以上となっており、事業承継の対応が必要な企業が多いことがわかります。

「令和3年中小企業実態基本調査(令和2年度決算実績)速報」資料より当事務所作成

【社長(個人事業主)の就任経緯別構成比】

回答のほとんどが、「創業者」または「親族内での承継」となっています。法人では規模が大きくなるごとに、「社内人材の昇格」「グループ会社からの派遣」の割合が高くなります。「外部からの招へい」はほとんど行われていない状況です。

「令和3年中小企業実態基本調査(令和2年度決算実績)速報」資料より当事務所作成

【社長(個人事業主)の在任期間別構成比】

法人の規模が小さいほど在任期間が長い傾向があります。「法人計」では「10~20年」が最も多くなっています。

「令和3年中小企業実態基本調査(令和2年度決算実績)速報」資料より当事務所作成

【事業承継の意向構成比】

「まだ事業承継を考えていない」が全体で約4割と最も多い回答になっています。事業承継について検討している企業では、「親族内承継」の割合が高くなっています。

「現在の事業を継続するつもりはない」も個人事業(36.6%)と法人5人以下(15.7%)と高い割合で存在しており、廃業予備軍が多くいることが分かります。

「令和3年中小企業実態基本調査(令和2年度決算実績)速報」資料より当事務所作成

【事業承継の重要性】

国においても、事業承継ができずに廃業することによって、2025年までの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があり、事業承継は喫緊の課題としております。別の調査では、廃業予定の企業でも約3割の企業は、同業他社よりもよい業績を上げているという調査結果がありました。

「事業引継ぎガイドライン」改訂検討会 「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題(令和元年11月7日)資料より

現在、国では早い段階から事業承継について検討できるよう様々な仕組み作りを行っています。事業の承継には移行期間として、相応の年月が必要となります。早い段階で事業承継に対応することで、余裕をもって後継者への引継ぎができる、あるいはスムーズなM&Aも可能となります。

国が定めた「事業承継ガイドライン」では、「概ね 60 歳頃には事業承継に向けた準備に着手することが望ましい。既に 60 歳を超えている場合には速やかに身近な支援機関に相談すべきであり、特に 70 歳を超えている場合にはすぐにでも事業承継に向けた準備に着手すべきである。」としています。

(2022.4.12)