2020年から始まったコロナ感染拡大は、企業の資金繰りにも大きな影響を及ぼす恐れがあることから、金融機関は国の全面的な支援のもと、かつてない規模で積極的に融資を行ってきました。業績が厳しい企業も金融機関からの借り入れで当面の運転資金を調達しながら経営を続けており、コロナ後の倒産件数は非常に少ない水準で推移しています。

コロナの感染拡大から2年を経過しましたが、その間の道内の金融機関の貸出金の状況についてみてみます

【金融機関種別 貸出金残高増加状況】

北海道財務局では、毎月「北海道金融月報」により、各金融機関の種類ごとの預金・貸出金の状況について公表しています。

2021年12月末の貸出金残高は2019年12月と比べ、1兆1,961億円増加で8.2%と非常に高い伸びとなりました。

金融機関の種類別にみると、信組、信金、銀行の順に増加率が高く、規模の小さな取引先企業が多い金融機関での伸びが高くなっています。

〔貸出金残高〕                            (単位:億円)

2019/12 2021/12 増加額 増加率
銀行 109,674 117,955 8,281 7.6%
信金 31,755 34,764 3,009 9.5%
信組 3,827 4,498 671 17.5%
合計 145,257 157,218 11,961 8.2%

北海道財務局「北海道金融月報」より当事務所作成

 

【金融機関種別 貸出金伸び率の推移】

2020年1月以降の月別推移を見ますと、2020年5月以降急激な伸びを示しており、2021年5月まで高い水準で推移しています。信組においては10%を超える高い伸びが続きました。

この間は、国の支援により、借りる側にとっては無利息・無担保で借入(ゼロゼロ融資)できて、金融機関側では多くは信用保証協会の保証付きで貸出できるということで、非常にスムーズに貸出の実行が進んでいきました。

ゼロゼロ融資の取り扱いも終了し、2020年6月以降は増加率は低下していきます。銀行・信金は2021年12月末には0%に近い水準まで戻っていますが、信組については2021年12月でも4.8%と増加が続いており、引き続き顧客からの資金ニーズに対応している状況が続いています。

〔貸出金伸び率の推移〕

北海道財務局「北海道金融月報」より当事務所作成

2021年末には、いったんは落ち着きを取り戻したものの、2022年に入るとオミクロン株の大流行が発生し、まだまだ予断を許さない状況が続いています。

金融機関の貸し出しがこれだけ増えたということは、企業側においてそれだけ返済すべき借り入れが増えたということです。下図のとおり、貸出金残高は高い水準を維持したままとなっています。コロナの制度融資では、据置期間が最長3~5年となっており、今後返済が始まる企業もどんどんと増えてきます。

昨今、新たに物価上昇というリスクも加わる中で、企業の資金繰り状況は不透明な状況が続くと見込まれます。各金融機関がどのように対応していくかが、非常に注目されます。

〔貸出金残高の推移〕

北海道財務局「北海道金融月報」より当事務所作成

(2022.3.18)