今月3月は、多くの企業が決算期を迎えます。前年に引き続きコロナの影響に加え、最近は物価上昇という逆風の中での決算となり、業績への影響が懸念されます。

国税庁では、毎年法人税の申告状況を公表しており、今回は令和2年度の法人税の申告状況についてみてみます。

令和2年度は、令和2年4月~令和3年3月までに終了した事業年度が対象となりますので、いずれの企業も多かれ少なかれコロナの影響を受けた決算となります。

法人税申告における「黒字申告」と「欠損申告」の状況は下表のようになります。

【法人税の申告の状況】

国税庁「令和2事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」より当事務所作成

上表は、税金計算上の黒字・欠損ですので、会計での黒字・赤字とは相違はありますが、全体の法人の3分の1が黒字で、コロナの影響にも関わらず、黒字企業の割合は前年とほぼ同じです。黒字企業の割合は、平成22年度に25.2%と最低割合となりましたが、以降は黒字申告割合は増加し、ここ数年は30%台となっております。

申告所得・申告欠損金額を見ると、黒字企業の1件あたり所得は前年度と比較して7.9%上回っていますが、欠損企業については1件当たり欠損金額が56.1%増と大幅に増加しております。この結果を見ても、コロナ禍でも堅調に利益を増加させている企業がある反面、コロナで大きなダメージを受けた企業があり、明暗が大きくが分かれた決算となっていることがわかります。

なお、この黒字割合は、あくまで税金計算上の黒字で、会計上でも黒字企業が全体の3分の1しかないかというと、別な話になります。税金特有のからくりで、過去から繰り越した赤字がある場合は、黒字の金額から差し引けるという「繰越欠損金の控除」を適用した後に黒字ということで、「繰越欠損金の控除」を適用しなければ、黒字企業の割合は増加することになります。

高松国税局では平成28年度の黒字申告割合を30.9%と公表していますが、同時に「単年度の業績を示す繰越欠損金控除前の黒字申告割合も57.0%と、6年連続で50%を上回っています。」としています。

((注)繰越欠損金控除前の黒字申告割合とは、過年度から繰り越された欠損金等を控除する前の所得金額が黒字法人の割合を示します。)

 平成28年度における法人税の申告事績の概要 高松国税局

上記例から見ても、単年度だけみれば黒字という会社は、全体の50~60%程度はあると考えられます。

(2022.3.11)