20183月期の道内信金の決算が出揃いました。最近は地方銀行の苦境ぶりがしばしば報道されていますが、地域密着型の金融機関である信用金庫も同様に厳しい経営環境の中にあります。

 本業のもうけを示す「実質業務純益」は、20信金のうち16信金が前期比減益となりました。過去3期分を見ても、多くの信金が減益となる厳しい状況が続いています。

【表1 道内信金のうち実質業務純益が減益となった数】

 なお、20171月には江差信金と函館信金が合併し「道南うみ街信用金庫」が誕生、20181月には札幌信金、北海信金、小樽信金が合併し、「北海道信用金庫」が誕生しています。合併による規模拡大や効率化で苦境を脱しようとする動きも出ており、今後の各信金の動向が注目されます。

 次に、金融機関として本業である預金と貸出しの状況について見てみます。

【表2 道内信金の預金・貸出金の状況 (単位:億円)】

  北海道財務局「北海道金融月報(平成30年3月分)」より作成

 預金と貸出金ともに若干ですが増加傾向にあります。預貸率というのは、預金として預かった資金のうちのどのくらいの割合が貸出金として使われているかという数字です。現状4割強の数字ですが低下傾向にあります。貸出金として使われていない残りの資金については、有価証券等での運用が中心となりますが、こちらも金利環境が厳しくて利益が出にくい状況となっています。 

 金融機関の本業として貸出金でどれだけの収益を上げるかが問われます。表2のとおり貸出金は減少していませんが、実質業務純益が減少しているのは、貸出金の貸出金利の低下傾向が続いているからです。

【表3 道内信金の貸出約定平均金利】

 北海道財務局「北海道金融月報(平成30年3月分)」より作成

 マイナス金利導入前から貸出金利の低下が続いていることがわかりますが、低下傾向は止まることがなく、6年間で0.519%低下しています。

道内の信金の貸出金残高は、表2のとおり約3兆円です。0.1%貸出金利の利率が低下すると30億円利息収入が減少することになります。20183月期の道内信金全体の業務純益は200億円を切る水準ですので、貸出金金利の低下は業績に大きなダメージを与えています。また、金利低下の傾向が続く限り、貸出金が多少増加しても、収益は上がっていかないことになります。

 上記のように厳しい経営環境が続く信金業界ですが、地域密着型の金融機関として信金は地域経済を支える重要な存在です。地域の衰退が信金の業績悪化に直結しますので、信金は地域活性化に本気で取り組まなければならない状況となっています。

 各信金のホームページでは、決算状況や地域への貢献活動等をまとめた「ディスクロージャー」資料を掲載していますが、いずれも信金においても地域経済の発展のための懸命な努力をしていることがわかります。

2018.6.27)