619日に内閣府より「平成30年版高齢社会白書」が公表されました。白書の中から高齢者と労働について見てみます。

 日本の高齢者の就労意欲は高く,国際的にみると際立っているといわれていますが、どのくらいの割合の高齢者が働いているでしょうか。

【表】年代別就業率(55歳以上)

 

 

 

 

 

 

 

 男女で開きはありますが、高齢者の就業者の比率は高く、年金を受給している年代でも多くの人が働いていることがわかります。男性では6569歳でも半分以上の人が、7074歳での3分の1以上の人が働いています。

 

 次に、何歳まで働きたいかについての調査です。

【表】あなたは、何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいですか(60歳以上の仕事をしている人への調査)

 

 

 

 

 「働けるうちはいつまでも」が最も多く42.0%、「75歳くらい」の解答も1割以上の人がいます。2016年の日本人の健康寿命(健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間)は男性で72.14歳、女性で74.79歳です。健康で働ける限り働きたいという人が多いということでしょう。

 

 次に、高齢者の働いている理由についての調査です。

【表】収入のある仕事をする理由

 

 

 

 

 こちらは圧倒的に経済的理由が一番となっています。2番目の理由としては男性では「面白い、自分の活力になる」が、女性では「働くのは体によい、老化を防ぐ」があげられていますが少数派です。年金を受給している人の割合も相当高いと思いますが、それでも収入が必要なため働かざるを得ない人が多いようです。今後、年金受給開始年齢の引き上げや年金受給水準の引き下げが行われる可能性は高いと思いますが、そうなると就業率はなお一層高まっていくでしょう。

 現在、各業界で人手不足が問題となっていますが、今後生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)は大きく減少していきます。(生産年齢人口は2015年の7,629万人から2030年には6,875万人と754万人減少)。一層深刻化する人手不足に対して2025年までに50万人の外国人を労働者として受け入れるという政府の方針が出されていますが、仮に50万人が日本で働いてくれるとなっても、人手不足の解消には程遠い状況だと思われます。人手不足の解消のためにも高齢者の労働力は欠かせないものになってきています。

 白書の中でも、「人生100年時代」、「エイジレス社会」、「一億総活躍社会」というキーワードが謳われています。年金問題、人手不足問題、社会保障費負担の問題等で今後は生涯現役で働くことが当たり前の世の中になっていくことでしょう。(2018.6.21