6月1日、厚労省より「平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況」が公表されました。人口動態は、日本における1年間の出生や死亡、婚姻・離婚等の数字を集計したものです。ここでは、そのうち出生と死亡について見ていきます。

【出生】

 最近では“少子高齢化”という言葉を聞かない日はない状況ですが、結果はやはり“少子”の進行を裏付けるものです。

 1年間の出生数は、94万6060人で、前年(2016年)の97万6978人から3万918人減少しました。2016年は初めて出生数100万人を割り込んだ年です。

 2005年に年間の死亡数が出生数を逆転し、人口減少の時代に突入しています。年を経るごとに人口減少幅は拡大を続けています。

 毎年、合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数に相当)が公表されて話題となりますが、2017年は前年より0.01ポイント低い1.43でした。

 出生率を上げていくことは少子化対策には重要なことではありますが、残念ながら子どもを産む年齢層の女性の数自体が今後も大きく減少していくことから、産まれる子どもが増加していくことは難しい状況です。

〔女性の年代別人口(2018年1月1日現在概数)〕

(「総務省統計局 人口推計の結果の概要」より作成)

【死亡】

 1年間の死亡数は134 万433 人で、前年の130 万7748 人より3 万2685 人増加しています。少産多死の傾向は今後も一層進行して、2030年には出生数81.8万人に対して死亡数はほぼ2倍の160.3万人と推計されています。(将来人口推計、出生中位死亡中位推計)

 死因別死亡者数をみると、下表のとおりで①悪性新生物〈腫瘍〉(がん)、②心疾患、③脳血管疾患、④老衰、⑤肺炎の順になっています。

〔表 主な死因別死亡数の割合(平成29年)〕

(「2017年人口動態統計」資料より作成)

 高齢化の進行や疾病構造の変化で死因も変化してきています。2016年の数字と比較して、目立つのは「老衰」と「認知症・アルツハイマー病」の増加です。

 「老衰」については、2016年の92,806人→101,787人(8,981人増加)で、天寿を全うして亡くなる人が増えてきていることがわかります。男女計では第4位の死因ですが、女性では第3位の死因(11.7%で1割以上の人)となっており、この勢いで増加していくと、男女計でも近いうちに第3位の死因となっていくでしょう。

 「血管性及び詳細不明の認知症」と「アルツハイマー病」を合わせた数字は、2016年の23,863人→36,813人(12,950人)と大幅に増加し、特に女性では第8位と第10位を占めるまでに至っています。

 国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口(平成241月推計)では、2060年の日本の平均寿命の推計が公表されていますが、男性は84.19歳(2015年比+3.44歳)、女性は90.93歳(2015年比+3.94歳)と、今後も着実に平均寿命が延びていくことが見込まれています。

 「老衰」及び「認知症・アルツハイマー病」で亡くなる人の割合は今後も寿命の伸長とともに高まっていくでしょう。

 多死時代であると同時に超高齢者の増加する社会、認知症への対応、その医療・介護費を減少していく現役世代でどう支えるか、人口動態は多くの問題を投げかけてきています。